漫画キャラクター
死なない


  ● 目 次
 
はじめに
 〔1〕
 〔2〕
 〔3〕
 〔4〕
 〔5〕
おわりに


・ * ◆ * ・


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〔4〕 再び、まんがキャラクターは死なない 

 ゲベは花畑の中を死んだ子犬とかけまわる夢を見る。そのシーンに物語のまとめともいえるテーマを反復したテキストが添えられて幕を閉じるのだけれど、最後のページのゲベと子犬の会話を見るといまいち腑に落ちないことを言っている。

  ゲベ「ところでさーオマエってホントに死んだの?」
  子犬「ううん。」
  ゲベ「あ、そーなの?」


 物語内で子犬は確かに死んでいるのに、どうしてここで子犬は自分の死を否定するのか。逃亡劇の最中気絶したゲベのもとに子犬が亡霊になって現れた。そのような表現があったからといって、この会話が“子犬はゲベの心の中で生きている”と言おうとするものとは思えない。「あ、そーなの?」という淡白な反応はゲベがポーカーフェイスなキャラクターだとしても、ひどくあっさりしているように思えます。
 これは結局のところ、
写実性をもたない記号的まんが表現においては本当の死を描けないという作者の感慨というかもどかしさというか、そういうものを込めた会話だったのではないか。写実的な身体を付与した子犬は銃弾で打ち抜かれるという致命傷を負って死んだけれど、非写実的な身体をもつ店主は大怪我を負い瓦礫に埋まったにもかかわらず死なない。記号を組み合わされてあたかも大怪我を負ったような状態になっているにすぎず、記号的で非写実的な怪我なのだ。このように、キャラクターが担う身体性の違いによって生死が別れるということが同一作品上にあるのは不平等だし、不自然なことではないか。そういったことに疑問を感じたのかもしれない。

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