漫画キャラクター
死なない


  ● 目 次
 
はじめに
 〔1〕
 〔2〕
 〔3〕
 〔4〕
 〔5〕
おわりに


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〔1〕 まんが記号説とは? 
    ―― 大塚英志の解釈より

 『教養としての〈まんが・アニメ〉』(講談社現代新書)において、大塚英志が戦前から戦後にかけてのまんがキャラクターの身体表現の推移を「まんが記号説」を前提として論じている。「まんが記号説」とは手塚治虫のインタビューの発言から提唱された。まんが表現はあらかじめ用意された絵(記号)のパターンを組み合わせてひとつの表情や状態を表す手法であるという。

 大塚は、手塚が“記号で表現する<まんが>を「絵ではない」”といったことに着目した。絵とは対象を写実的に描画したもののことを言うのであって、記号的に描くまんがには写実性は付与されない。ゆえに、手塚のこの発言はまんがが写実的な表現ではないことを言わんとした発言だったのではないか、と説く。

 これは登場するキャラクターにおいても同様であり、彼らも写実性を持ち合わせない――現実の生身の肉体を持っているわけではない。傷つかなければ死にもせず、性別もない。そういった“非写実的”表現であるまんがの中に、写実性を描きこもうという試行錯誤が手塚治虫以後、作家たちによってくり返されることになる。そして、戦後まんがキャラクターはさまざまな問題につきあたりながら写実的な身体を段階的に獲得していった――まんがという表現手法が多くの作家に描かれ多くの作品が享受されてきたという歴史的積み重ねにより発展していった――という論を展開しています。

 大塚の論には現代のまんがが記号表現によりながら写実的な描写を可能ならしめているというところまで説明されているのだけれど、ここでは本来的に“まんがキャラクターが写実性をもっていない”という説に注目したいと思います。


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